富山県朝日町で地域おこし協力隊員から役場職員になって5年目の小谷野黎(れい)さん(34)は、4月から広報担当として地域を駆け回っている。それまでは民間交通事業者で働いた経験を生かし、地域交通の仕事に携わっていた。新たな視点からまちの魅力を再発見する日々で、「広報誌やSNSを通じて、広く発信したい」と張り切っている。

 着任早々、カメラを手に町内の行事に足を運び、広報誌「広報あさひ」5月号の制作に奔走した。表紙には「春の四重奏」のチューリップ畑で行われた花摘み作業の写真を採用し、巻頭特集や人物紹介コーナーも執筆した。いきなりの発行を終え、「知らなかった催しも多く、まちを広く深く理解しないといけないと感じた」と振り返る。

 東京で生まれ育った小谷野さんは、大学卒業後に小田急電鉄の関連会社に就職。箱根登山バスのダイヤ編成などを担当し、都内の制作会社でも働いた。ただ、もともと都会暮らしが性に合わず、地方移住と公務員就職への思いを温めていた。

 地域おこし協力隊制度を知り、交通分野の人材を求めていた朝日町に応募。2019年秋から協力隊員として活動し、21年春に町職員に採用された。地域交通に一貫して携わり、全国から注目を集めるマイカー乗り合いサービス「ノッカル」の開発にも関わった。3月に町営バスのダイヤ改正をまとめた矢先、みんなで未来!課情報発信係に異動することになった。

 広報誌作りをはじめ、SNSなどでの情報発信を担い、「取材したらすぐに記事と写真をアップし、投稿数を増やすなど自分のカラーを出したい」と意気込む。町民との触れ合いが大切な業務と実感しており、「小さな事柄でも丁寧に取り上げ、いずれは地域交通をテーマに企画特集を組みたい」と前を見据えた。