25日に死去した篠田正浩さんは、富山県入善町や朝日町などでロケを行った映画「少年時代」(1990年)で監督を務めるなど、富山ゆかりの作品でもメガホンを取った。

 「少年時代」は、入善町ゆかりの芥川賞作家、柏原兵三の自伝的小説「長い道」と、それを漫画化した氷見市出身の故藤子不二雄(A)さんの「少年時代」を基にした作品で、戦中戦後の少年たちをみずみずしいタッチで描いた。日本アカデミー賞の最優秀作品賞と監督賞を受賞した。

 ロケ時の宿泊先となった料理旅館あけぼの(朝日町泊)の女将(おかみ)、上島恵子さん(75)は「暑い夏の撮影がついこの間のように思い出される。監督は親しみやすい人柄だった」と話す。「個室ではなく、全スタッフと共に大部屋で食事を取っていた。偉ぶらない様子で、全体の和を大切にしていた」と振り返った。

 映画「はなれ瞽女(ごぜ)おりん」(77年)は氷見市で、「夜叉(やしゃ)ケ池」(79年)は南砺市城端地域の縄ケ池でそれぞれ撮影した。2012年に開館した高志の国文学館の開設準備アドバイザーも務めた。