第172回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の贈呈式は21日、東京都内で開かれ、短編集「藍(あい)を継ぐ海」で直木賞に選ばれた元富山大理学部助教、伊与原新(いよはらしん)さん(52)=東京=が「精いっぱい帆を広げ前に進んでいきたい」と決意を語った。

 デビューから今回の受賞作品までの執筆を振り返り編集者に礼を述べたほか、「科学の世界から熱い応援を受けている」と語った。

 最近は「小説で科学の世界に恩返ししたい」と口にするようになったとした上で、地球惑星科学者の一人と交わしたメールの内容を披露。「『恩返しより自分の道を追求してください。君はいつまでもわれわれの仲間です』と送ってきてくれた」と語り「本当にうれしくて、何よりの激励だと思っている」と感謝した。

 作家の辻村深月さんは「さまざまな科学の知識が織り込まれているが、それだけにとどまらないところが魅力。若い人にも読んでほしい」と祝辞を述べた。

 「DTOPIA(デートピア)」の安堂ホセさん(30)と「ゲーテはすべてを言った」の鈴木結生(ゆうい)さん(23)に芥川賞が贈られた。