「宿場町の温かさ染みた」

 2022年に富山市-東京・日本橋の約600キロを踏破した同市海岸通の自営業、中村雅宏さん(62)が、今度は中山道の長野県・追分宿-京都・三条大橋部分約380キロを昨年4月から延べ17日間かけて歩き抜いた。中山道には今でも江戸時代の風情漂う旧道などが残り、中村さんは「徒歩ならではの美しい風景や人の温かみを感じられた」と旅路を振り返った。

 登山が趣味の中村さんは還暦を迎えたのを機に、かつての富山藩主らの参勤交代ルートを徒歩でたどることを思いついた。22年1~7月の休日に、自宅から日本橋まで、旧北陸道、旧北国街道などを経由して目指した。

 昨年挑んだのは、江戸時代に整備された五街道の一つで東京・日本橋と京都・三条大橋を内陸経由で結ぶ中山道(約530キロ)。前回のルートに追分宿-日本橋が含まれていたため、昨年4月末に追分宿から出発。週末ごとに前回到達場所まで電車や車で往復し、昨年12月末、三条大橋にゴールした。

 1日平均約22キロを7時間かけて歩いた。足に血豆ができ、炎天下での峠越えなど苦労も多かったという。そんな時、癒やしになったのが沿道の風景だ。石畳の旧道や昔のたたずまいを残す宿場町に触れた。中村さんは「特に、松尾芭蕉や島崎藤村関連の石碑、一里塚などがある馬籠宿(岐阜県)付近が思い出深かった」と話す。行く先々での温かいもてなしも、宿場町ならではの歴史を感じたと言う。

 還暦を過ぎてますます体力に自信を付けたという中村さん。「困った時に助けてもらったことも多く、宿場町の人々の温かさが心に染みた」。街道を歩くのは江戸時代の人々の生活を追体験ができるのが魅力とし、「次回は北国街道の未踏破部分などを完歩したい」と意気込んでいる。