災害時の外国人住民への支援が課題となっている。昨年の能登半島地震では、外国人がコミュニケーションの難しさから避難所を出ざるを得なかったケースもあった。一方、留学生や技能実習生は若者が多く、「支援する側」の人材になり得るとの指摘もある。14日は富山市で「『DEI』な社会へ」と題した関係者のワークショップがあり、多様な人たちが互いを認め、災害時も支え合う社会の実現に向けた方策を考えた。

 DEIは多様性(ダイバーシティ)、公平性(エクイティ)、包括性(インクルージョン)を意味する言葉で近年注目されている。県によると、県内に住む外国人は2023年度は約2万1千人となり、2年連続で過去最多を更新した。

 外国人住民が増える中、言葉や文化の違いから避難所でトラブルが起きるケースも見られる。日本語学校の富山国際学院(富山市芝園町)によると、能登半島地震では、石川県珠洲市でインドネシア人技能実習生が避難所に身を寄せたものの、日本人との共同生活がうまくいかず避難所を出た。ほかにも、支援物資をもらってよいか分からず、食べ物や毛布がないまま一夜を過ごした外国人もいたという。

 災害時に外国人住民をサポートする体制の整備は喫緊の課題だが、高齢化社会の中、外国人は支援される側ではなく、支援する側になることができるとの声もある。14日のワークショップは、同学院がDEIの観点も踏まえて支え合う社会づくりの方策を探ろうと企画。同学院に通う留学生ら外国人約60人が県防災危機管理センターに集まった。

 東日本大震災の復興支援などに携わり、被災者支援に詳しい坂井公淳さん(長野)と渡嘉敷唯之さん(静岡)が講師を務めた。

 坂井さんは避難所生活について、外国人は宗教上の理由で食べられないものがあったり、張り紙の日本語を読めなかったりと、困ったことが起きると説明。日本語が分かる留学生は避難所の運営や通訳などを担う「災害サポーター」になれると指摘し、「外国人にしかできない強みがある。もし自分が避難所に行ったら何に困るか、普段から考えてほしい」と述べた。参加したバングラデシュ出身のモハンマド・ディーンさん(25)は「避難所では日本人と助け合い、英語などの通訳をしたい」と話した。

 参加者の多くは、能登半島地震の発生時、県内の自宅やアルバイト先で被災したという。初めて大きな地震に遭ったスリランカ出身のラスミさん(22)は「怖かった。避難所の場所が分からず、自宅で一人で泣いていた」と振り返る。

 坂井さんは「避難所がどこにあるか把握することが重要」と語り、安全に過ごせる場所の確保や、困ったときに助け合える近隣住民との関係づくりを呼びかけた。