富山県南砺市で初めてとなる訪問診療専門の医院開設に向け、医師の高瀬義祥(よしあき)さん(36)と愛(まな)さん(35)夫婦=砺波市=が準備を進めている。多くの疾患やけがを幅広く診る総合診療専門医として、きめ細かな診療に当たるほか、時間帯を問わず、容体の急変に対応し、高齢患者らが住み慣れた自宅で長く暮らせる環境づくりに貢献していく。
南砺市内では、主に内科医院や市立病院で訪問診療を行っているが、外来診療と掛け持ちであるため、時間帯によっては、体調が急変した場合などの即応が難しい。
訪問診療に特化した高瀬さん夫婦の医院は、いつでも連絡を受け付け、切迫した状況であれば、速やかに駆け付ける。その場で血液検査などをして、適切な処置をすれば、入院を避けることも可能だ。「病を抱えながらの在宅生活の安心を支え、その期間を延ばすことで、その人らしい生き方の実現につながれば」と、義祥さんは望む。
連携相手に想定される市訪問看護ステーションの吉田裕美子所長は「通院がつらいがん患者を多く診てもらえれば、在宅生活の快適さを高められる」と、効果を期待する。
高瀬さん夫婦は、一人一人にふさわしい「みとり」も心がける。終末期を迎え、延命を希望しない場合は、蘇生措置などをせず、穏やかな最期を迎えてもらう。望まない救急搬送や入院を減らすことで、手術などを担う急性期病院の激務を和らげ、地域医療の持続性を高めることにもつながりそうだ。
義祥さんは、患者の人生を「物語」と捉えて、その人に適したケアを追求する「ものがたり診療所」(砺波市太田)で、愛さんは、へき地医療の最前線となる南砺市平診療所で勤務している。
これまでの経験を伝えるため、大学のプログラムを実践できる教育現場の機能も持たせる。医学生や臨床研修医、総合診療の専攻医を受け入れるつもりだ。2人とも富山大医学部卒業後、南砺市民病院の臨床研修医として、介護や福祉と連携した地域医療のありようを学んだことを念頭に、「南砺の医療を担う人材を育てることで、恩返しができれば」と言う。
医院は井波地域中心部の本町にある古民家を再生し、4月にオープンさせる。周辺には、同様に空き家を活用した多彩な店舗があり、それらの関係者との交流も深め、この地域にふさわしい「医療の姿」を追い求める。