一部廃止案が浮上している富山地方鉄道の鉄道線本線を巡り、富山地鉄の新庄一洋専務は17日、2026年度の沿線自治体による支援内容次第で、25年末としている廃線判断の先送りに応じる考えを示した。県民会館で県が開いた鉄軌道サービス部会の終了後、報道陣の取材に答えた。11月下旬の会合で行政側から示される支援内容を踏まえて社内で協議し、12月に受け入れるかどうかを明らかにする方針。

 富山地鉄は本線の不採算区間のうち、行政の支援がなければ滑川―宇奈月温泉駅間を廃線にするとしている。廃止の場合は2026年11月までの運行を想定しており、存廃を判断する期限は今年12月末としている。県と沿線自治体は、26年度の運行支援費用を確保した上で廃止判断の先送りを会社側に求める方向で調整している。

 新庄専務は、現時点では行政側から26年度の支援方針について「何も示されていない」とし、12月末という期限は変わりないと説明。鉄道事業の赤字が積み上がる中、短期的な支援ではなく、その後の経営安定や利用者増加につながるような支援策を期待しているとし「26年度の支援に限ったその場しのぎの内容ではなく、後々につながるような内容であれば協力してやっていきたい」と述べた。

 自治体側は現在、富山地鉄との協議に臨むため、26年度運行分の支援額などを検討している。富山地鉄を含めた11月下旬の会合で具体的な支援内容を明らかにするとみられる。新庄専務は取材に「廃止届の扱いについては12月中に明らかにしたい」と話した。

慎重議論 識者が求める

 県地域交通戦略の推進に向けた取り組みを話し合う鉄軌道サービス部会(部会長・宇都宮浄人関西大教授)では、一部廃止案が浮上している富山地鉄について、出席者から慎重な議論を求める意見が相次いだ。

 富山大都市デザイン学部の本田豊教授は、のと鉄道(石川県)の一部区間の廃線を例に「地元がいくら望んでも、一度廃線になると復活は難しい。十分な時間をかけて検討を進める必要がある」と指摘した。

 宇都宮教授は富山地鉄鉄道線の赤字が継続している状況に触れ「一事業者だけで負担して運行するのは難しく、適切ではない」と強調。交通ネットワークを維持する観点から丁寧に議論すべきとした。

 会合では県が、戦略で掲げた目標に対する進ちょく状況を報告。「県民1人当たりの地域交通利用回数」は、目標の年間50回に対し、最新の2024年度が43・7回で前年度から1・7回増えた。