富山県産素材にこだわったバウムクーヘンの専門店が5月23日、高岡市下黒田の新高岡駅前に開店した。店主の楠芳春さん(50)=同市=は、和菓子店で培った販売スキルや店舗運営の経験を生かそうと、母親の住む高岡で創業に踏み切った。「富山の食材がたくさん詰まったバウムクーヘンで人と人の縁をつないでいきたい」と意気込む。

 楠さんは高岡市石瀬に生まれた。県内にいたのは数カ月で、父親の転勤とともに静岡や愛知などを転々とし、小学生からは大阪府で過ごした。

 ホテル業界に勤めた後、30歳で京都に拠点を置く和菓子の製造販売会社に転職。店長やエリアマネジャーを務め、商品の販売や売り上げ管理など、約20年にわたり店舗運営に携わった。2023年12月に父が亡くなり、会社を辞めて富山県内への移住を決めた。

 バウムクーヘンに特化した店を開くことに決めたのは「県産の米粉を使ったスイーツを作りたい」という思いからだ。幼い頃から富山の親戚が送ってくれる米を食べていたと言い「富山のお米のおいしさを、より多くの人に知ってもらいたかった」と語る。

 製造技術を習得するため、バウムクーヘンの商品開発に携わる神戸市のパティシエに技術を教わった。米粉は小麦粉よりも粘り気が少ないため、粘り気を出せる焼き方や材料の配合などを試行錯誤して開発した。

 米粉のほか、県産の卵やこうじ、富山湾の海洋深層水の塩も使用。平安時代の宮廷貴族が用いた配色美「かさねの色目」をコンセプトに、バター生地に塩と甘こうじの2層のコーティングを重ねた。店名はかさねの色目とバウムクーヘンの輪をリンクさせて「わの色がさね」と名付けた。

 楠さんは「観光客はもちろん、地元の人たちにもお土産や贈り物として使ってもらいたい」と話す。店は火、水曜定休。商品がなくなり次第、その日の営業を終了する。