2月のある日の午前7時ごろ、群馬県桐生市は氷点下に冷え込んでいた。警察車両の中は寒くはないが、緊迫感が漂う。無線が鳴る。
「出てきた」
「ゴミ持ってる」
アパート2階の一室から、フィリピン人女性がゴミ袋を持って出てきた。階段を下りた瞬間、群馬県警の捜査員と出入国在留管理庁の職員が駆け出した。無線で報告が入る。「オーバーステイを自認しています」
女性は入管難民法に違反した疑いで摘発された。この法律では「在留期間の更新や変更をせず、期間を過ぎても日本に残留するもの」に対して罰則を科している。
同行許可をもらい、一部始終を取材する中で、もやもやとした複雑な気持ちがわいてきた。女性は近所ですれ違う善良な外国人と変わらないように見えたからだ。「在留資格を持たないだけで、犯罪者扱いしていいのだろうか?」(共同通信=赤坂知美)
▽入管施設から強制送還
この日、摘発されたのはフィリピン人の男女4人。短期滞在や技能実習生として入国し、在留期限を過ぎても日本に滞在していた。他の罪はなかった。警察署での聴取後、妊婦1人を除く3人は午後には入管施設へ移送された。
逮捕された場合は勾留→起訴→裁判という流れになる。余罪がなかったり非正規の滞在期間が短かったりする場合は、逮捕令状なしの摘発を行い、任意聴取→入管施設に収容→本国へ送還という今回のような流れになる。
一方で、県警は厳しさだけではないとも強調する。「多くの外国人が法律を守って暮らしている。県や自治体と協力して多文化共生施策にも取り組んでいる」
▽群馬は検挙トップクラス
全国ではどれくらいの人が送還されているのだろうか。