NHKがテレビ・ラジオに加え、インターネット業務を法律で義務づけられた。これに伴い、テレビを持っていない人も、NHKの番組や情報をネットで視聴できるようになった。ただし、NHKと受信契約を結ぶ必要があり、その手続きがややこしい。何をすると、受信料を請求されるようになるのか―。(共同通信編集委員・原真)
▽一つではない「NHK ONE」
NHKは1995年に公式サイト「NHKオンライン」を開設し、ニュースなどを提供してきた。2008年、過去の番組を有料で配信する「NHKオンデマンド」を開始。2011年にラジオの同時・聴き逃し配信「らじる★らじる」、2020年にはテレビの同時・見逃し配信「NHKプラス」をスタートさせた。
主力の「NHKプラス」は当初、テレビを所有して、NHKと受信契約を結び、受信料を支払っている人向けのサービスだった。テレビを持たず、受信料を支払っていない人もNHKプラスを利用できれば、支払っている人と不公平になってしまうからだ。
テレビのない人が、NHKプラスの利用を望んだ場合、テレビを買うよう求められた。放送法上、テレビ受信機を設置した人は、NHKと受信契約を結ばなければならないが、受信機がなければ、契約の対象にならない。
しかし、NHKがネットに進出するのは、テレビ離れが進む若者らに、NHKの番組や情報に接してもらうためだ。テレビを買わなければネットを利用できないというのは、本末転倒も甚だしかった。
ネットの普及に対応して、欧州諸国は公共放送の受信料制度を改正している。英国は、テレビを持たなくても、スマートフォンやパソコンで公共放送の動画配信を視聴する世帯は、受信料徴収の対象とした。ドイツは、テレビやスマホなど機器の所有に関係なく、全世帯から受信料を集めるようにした。
ただ、ドイツ型には抵抗も予想されるため、日本は英国型を選択した。改正放送法により、2025年10月1日から、テレビ・ラジオの放送と同様、通信のネット経由の番組や情報の提供も、NHKの必須業務とされた。テレビを設置した人だけでなく、NHKの番組配信や番組に関連する情報(番組関連情報)をネットで受信し始めた人も、受信契約を義務づけられた。
その受信料の金額は、BS放送を除く地上放送のみの契約と同じ月1100円だ(2カ月ごとに支払う場合)。
NHKは、必須業務となったネットのサービス全体を「NHK ONE」と名付けた。パソコンなら、NHK ONEのサイトから、NHKプラスをはじめ各サービスを利用できる。
ところが、スマホだと、ジャンルごとに次の五つのアプリをダウンロードする必要がある。
・NHKプラス
・報道の「NHK ONEニュース・防災」
・学校教育の「NHK ONE for School」
・語学講座の「NHKゴガク」
・らじる★らじる
全然、ONE(一つ)になっていない。
しかも、五つあるアプリのうち、NHKプラス、NHK ONEニュース・防災、NHK ONE for Schoolの三つはリニューアルされ、これまで使っていた人も、ダウンロードし直さなければならない。技術的な理由だというが、面倒なのは否めない。
▽4段階
実際にNHK ONEを利用するには、どうすればよいのか。4段階の手続きが必要になる。