世界で男女平等が最も実現していると言われるアイスランドで1975年10月24日、この国の女性の9割が参加したと言われる「ストライキ」が起きたことを知っているだろうか。

 その日は「女性の休日」と呼ばれ、職場や家庭での男女格差や差別に憤った女性たちが一斉に家事や仕事をボイコットし、休んだ。自分たちがいなければ社会も家庭も立ちゆかないということを示し、アイスランドがジェンダー格差を縮めていく大きなきっかけになった。

 それから50年がたった今年10月、この歴史的な一日を振り返ったドキュメンタリー映画「女性の休日」(パメラ・ホーガン監督)が日本で公開され、反響が広がっている。さらに「女性の休日」の一日を子ども向けにつづった絵本「本当にやる! できる! 必ずやる! アイスランドの『女性の休日』」(ゆぎ書房)も出版された。注目が集まる中、国内でも男女平等に向けたムーブメントを起こそうという動きが活発化している。

 年齢や党派、立場を超えて、なぜアイスランドの女性たちは団結し、ストライキを実現できたのだろうか。(共同通信編集委員・宮川さおり)

 

 ▽女の子は船乗りになれない?

 50年以上前、アイスランドに生まれた、ある女の子は「大きくなったら船乗りになって世界を旅したい!」と話すと、「女の子にはそんなことはできない」と大人に言われた。銀行では女性たちが仕事を教えた新人の男性たちがみるみるうちに出世し、給料も追い抜いた。水産加工場でも、女性の方が魚の量が多くさばけるのに、なぜか男性の方が給料が高かった―。

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