韓国・釜山で開催中の「第30回釜山国際映画祭」で21日、映画『国宝』が公式上映された。会場となったCGV Centum CityのIMAX館には約300人が来場し、上映後には李相日監督、主演の吉沢亮、喜久雄の少年時代を演じた黒川想矢が舞台あいさつを行った。

【画像】「第30回釜山国際映画祭」『国宝』チームの写真

 同作は、公開108日間で観客動員数1050万人、興行収入は148億円を記録。邦画実写としては22年ぶりに100億円を突破し、歴代の興行収入ランキング(※興行通信社調べ)では、邦画実写において『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開、173.5億円)に次ぐ第2位の成績を記録した。「第98回アカデミー賞」国際長編映画賞日本代表にも決定した。

 司会者から「なぜこれほど日本でヒットしたのか」と問われた李監督は、「歌舞伎は日本の観客にとっても知ってはいるけれど、実際に触れる人は少ない。新しい発見を与えられる映画になったのだと思います」と分析。「歌舞伎役者ではない俳優たちがまるで歌舞伎役者のように非常に長い時間をかけてトレーニングをし、歌舞伎役者の感情をキャラクターに溶け込ませたため、役者の方々の真剣さが観客の皆さんにも届いたのではないかと思います」と語った。

 吉沢は「李監督の『悪人』『怒り』が大好きで、ぜひご一緒したいと思っていた」とオファーを受けた時を心境を回想。「歌舞伎役者の役と知り、想像以上にハードルが高いと感じましたが、その時点ではまだ深く歌舞伎というものに関わったことがなかったので、どれだけ大変なものか想像がつかなかったです。“李監督への愛”だけで飛び込みました。1年半、稽古を重ねれば重ねるほど歌舞伎役者たちに並ぶのは到底無理だと実感しましたが、やるしかないという覚悟と意地で撮影に挑みました」と力強く語った。

 オーディションで役を勝ち取った黒川は「歌舞伎役者の幼少期を演じるのには自信がなく、でもこの役は絶対に僕がやりたいと思いました。歌舞伎の稽古は半年くらいでしたが、今までダンスなどもやったことがなかったので、日本舞踊は難しかったのですが、途中からお稽古が楽しくなり、演技に近い感覚ですごく楽しかった」と振り返った。

 観客から「歌舞伎を通してたくさんの美しさを教えてくれた映画だと思うが、人間のどのような部分が美しいと思うか?」と質問されると、吉沢は「今回、女形を演じていて、自分の感情をコントロールできない瞬間や何か必死に求めて、恋焦がれている時の表情は、外から見ると美しく見えたりするのではと、この喜久雄を演じていて感じました。喜久雄が演じた(『曾根崎心中』の)お初もその恋のためだけに命を燃やしていく。こういった演目が多いということは、そういったものが見たいのだろうと思っています。まっすぐ向き合う瞬間というのは人を美しくするのかなと思います」と答えた。

 黒川は「今作で長崎弁と関西弁の2つの方言を使いましたが、長崎弁の音の響きがとても美しいと思いました。外国語で何を言っているのかわからなくても、気持ちが伝わるような、そういう時はとてもうれしいし、美しいなと思います。今作は日本語ですが、韓国の方々に絶対届くだろうし、届いてほしいなと思っています」と願った。

 最後に李監督は「11月から韓国で公開されます。ぜひ応援してください」と呼びかけ、黒川は「韓国の皆さんに観ていただけるのが楽しみ」と笑顔で語った。吉沢も「釜山で観客の皆さんが前のめりで観てくださったことが伝わり、とてもうれしく思います」と感謝を伝えていた。