城端蒔絵(まきえ)の歩みを伝える企画展「城端蒔絵450年 小原治五右衛門(じごえもん)と城端のあゆみ」が13日、富山県の南砺市福光美術館で開幕した。漆では不可能とされる白の発色を実現するなど、独自の表現方法と優れた美意識で発展してきた小原家伝来の漆芸の軌跡を紹介している。10月26日まで。

 城端蒔絵は、安土桃山時代から一子相伝で受け継ぐ伝統技法。歴代が治五右衛門を襲名している。企画展には、県指定文化財の「彩漆鯰(いろうるしなまず)模様手付盃盆(てつきはいぼん)」(9代)をはじめ、歴代の代表作や下図など88点を展示した。

 初期の密陀絵(みつだえ)作品「桐鳳凰(きりほうおう)密陀絵盆」をはじめ、江戸後期の7~9代が築いた黄金時代、当代に至るまでの作品をそろえた。城端曳山(ひきやま)祭で巡行する曳山や庵屋台の意匠や修復を手がけたことなどを示す資料も紹介し、地域との深いつながりも示している。

 開会式で、田中幹夫市長が「城端蒔絵は世界に発信できる南砺の宝だ」とあいさつ。15代の好博さん(74)が「漆器の産地で、今も一子相伝で伝えているのは城端蒔絵のみ。わが家の誇りだ」と語った。

 ギャラリートークでは、当代の16代治五右衛門さん(46)が城端蒔絵の誕生から現代までの歩みを解説した。大正末期に途絶えかけたが、祖父の14代が再興させるなど苦難の歴史があったとし、「歴代はただ受け継ぐだけでなく、変容と進化を遂げてきた」と語った。北日本新聞社共催。