小説や詩作、評論などの執筆とともに、イラク戦争や沖縄の基地問題について積極的に発言してきた作家の池澤夏樹さん。敗戦の約1カ月前に生まれ、文字通り「戦後」の同伴者だった池澤さんに戦後日本と平和の関係や、文学の役割を聞いた。(聞き手 共同通信=米田亮太)
▽戦争ができる国に
戦後の日本社会の変化は分かりやすい。あの戦争は政治的には敗戦だったけれども、人々にとってはやはり終戦だった。空襲警報はなくなり、食べることも少しずつできるようになって、みんなが「もう戦争はしない」ことにほっとした。あんなことはこりごりだと思った。
経済的にも、高度経済成長で富が国内にある程度行き渡るようになった。結果、社会はどんどん派手になっていった。面白おかしいテレビやゲームなどの娯楽も広がった。とにかく、大きな戦争のない時代がなんとか続いてきた。
それが今、軍事費の増大など、なし崩し的に戦争ができる国になってきている。
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