プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらった連続インタビューの蔵出し企画「名球会よもやま話」。第52回は巨人の9年連続日本一に貢献した、盗塁王6度の柴田勲さんが2度目のご登場です。元祖スイッチヒッターの誕生秘話や、当時の川上哲治監督が採り入れた「ドジャース戦法」について語ってくれました。(共同通信=栗林英一郎)
▽甲子園優勝投手の入団勧誘で耳にした意外な口説き文句
僕は法政二高を卒業してプロ1年目のキャンプに、学校の関係で1週間ぐらい遅れて入ったんです。ちょっと肩も痛かったから、あんまり練習してなかった。キャンプに行って1週間か10日ぐらいしてかな。やっと捕手に座ってもらって投げるぐらいの頃だった。突然、大雨が降ってきて練習ができなくなっちゃった。だけどファンがたくさんいる。川上さんが突然マイクを持ってね。「お客さん、長嶋(ミスタープロ野球の長嶋茂雄さん)と柴田を(野球場に隣接する)陸上競技場で100メートル競走させるから、よかったらそっちへ」。当時、川上さんの考えでは長嶋さんが一番、足が速かったんじゃないですかね。その長嶋さんと競わせようってことだった。急に言われたから長嶋さんはスパイクで僕は運動靴。それで僕、勝っちゃったんですよ。
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