富山県立山町芦峅寺の県立山博物館まんだら遊苑にある国指定重要文化財「旧嶋家住宅」の耐震・保存修理事業が、このほど完了した。設計監理を手がけた職藝学院(富山市東黒牧)学院長の上野幸夫さん(68)が改めて文化的価値を確認。国重文の山小屋「立山室堂」に見られる県内で数少ない中世の構造が用いられており、上野さんは「重く湿った雪が降る地域ならではの強固な造り。後世に残していくことが大切だ」と強調した。30日から観覧できる。
18世紀ごろ建築されたとされる旧嶋家住宅は、かつて飛騨街道筋の旧細入村の富山市片掛にあった。外見は町屋風、内部は農家風で、県内の山地の街道筋にある民家の一つの典型だ。1969年に県による民家の緊急調査で重文候補に挙がり、県に寄贈後、現在地に移築された。映画「劔岳 点の記」の撮影にも使われた。
約10年おきに石置き板屋根のふき替えが行われ、部分修理も重ねてきたが、2003年を最後に行われなくなり、21年度に雨漏り被害が悪化。耐震診断を実施し、文化庁補助事業としてふき替えや土壁の塗り直しといった保存修理に加え、見た目に配慮した耐震補強を進めてきた。
保存修理工事の完了検査が行われた27日は、上野さんが現場を訪れ、同博物館関係者に改めて文化的価値を解説した。県内では300年前の建築物である「立山室堂」で見られる、土台から屋根まで継ぎ目のない「棟持柱」が複数使われた特殊で強固な構造であることを紹介。あえて湾曲した梁(はり)材を組み合わせ、技術の高さを見せる技法も用いられていることを説明した。
10月には上野さんによる解説会も開催予定。同博物館は「貴重な建築物を多くの人に知ってもらいたい」としている。