受刑者に記事を書いてもらおう。東京拘置所(東京都葛飾区)で2024年度、初の試みとして共同通信記者による記事の書き方講座が開かれた。初対面の人と向き合い、質問を重ねて話を聞き出し、記事にまとめるまでを経験。取材時に求められるコミュニケーション能力や、執筆で必要なまとめる力を磨くことで、円滑な社会復帰に役立ててもらうのが狙いだ。
記事完成までの過程では、受刑者間で活発なやりとりも繰り広げられた。「カギ括弧が少ない」「もう少し削れば別のエピソードを入れられる」。編集の現場さながらの白熱した意見交換に、講座に立ち会った拘置所の職員も記者自身も驚かされた。(共同通信=今村未生)
▽記者会見形式
講座は2024年8月から2025年1月まで6回開かれた。参加したのは30~40代の男性受刑者4人。まず、新聞紙面の構成などについて学んだ。その後、出所者を雇用する「協力雇用主」の建設会社社長、高橋政志さん(55)を招き、記者会見形式でインタビュー取材を実施した。
最初は互いにぎこちない様子。受刑者側は質問が早口になり、高橋さんも緊張のためか表情が硬かった。取材が進むにつれて次第に笑顔が見え、雰囲気がほぐれていった。質問は1人1つずつで、順番に回す形。受刑者からは「出所後、気を付けるべきことは」「罪を犯した人を雇うことで、不利益を被ったことはあるか」との質問も。インタビューは約1時間に及んだ。
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