和倉温泉(石川県七尾市)の加賀屋グループの女将(おかみ)、長谷川明子さん(60)がプロデュースする日本料理店「万葉」が22日、富山県高岡市のウイング・ウイング高岡にオープンする。加賀屋は能登半島地震で大きな被害を受け、全館を休業している。「復興の助けになれば」と、高岡市の経営者らが長谷川さんに出店を提案。「日本一」と言われる加賀屋のもてなしを高岡の地で味わうことができる。
5日は関係者が店舗に集まり、概要を発表した。万葉は同ビル民間棟3階に入居。2021年6月から空き店舗となっていたスペースで、六つの個室とすしカウンターを用意し、定員は56人とした。
高岡市が万葉集の故地であることから、万葉と名付けた。従業員は10人で、半分は加賀屋グループから出向し、残りは現地採用する。料理は、加賀屋と現地採用の料理人が富山の食材を生かしたものを提供。1万1千円と、1万6500円のコースを用意する。職人が金沢市のすしの名店「小松弥助」で学び、すしを握ることも計画している。
出店計画が動き出したのは24年夏ごろ。角田悠紀市長が、和倉温泉に観光客を送り、長谷川さんのことも知るイルカ交通(高岡市二塚)の社長、西村寛さん(50)と共に、加賀屋に出店を働きかけた。「高岡に出店することで復興の歩みを進め、『日本一の宿』というブランドを守ってほしい」と伝えたという。
長谷川さんは「従業員も『働きたい、働きたい』と思っていたので、うれしくて、ありがたくて涙が出た」と振り返る。
ただ、加賀屋としては旅館の復興と、地震の前から予定していた大阪市の日本料理店のオープンに取り組まなければならず、高岡の出店に力を注ぐことが難しかった。そこで、長谷川さんと西村さんが個人として共同出資し、万葉の運営会社である高能商事(七尾市)を設立し、開店を目指した。西村さんは「復興が進めば、能登の入り口である高岡の活性化にもつながる。声をかけた以上、一緒にやろうと決めた」と言う。
加賀屋は既存建物近くに新たな旅館を建設するが、開業は26年度の冬になる。長谷川さんは万葉について「加賀屋を発信する場にもしていきたい」と語った。
高岡市は、1千万円を上限に改装費の3分の2を補助する開業支援制度を活用し、出店を後押しした。店は予約制で、受け付けは今月19日から。