東京都の会社員山田駿介さん(26)=仮名=は、大学院1年だった2022年9月、ある殺人事件の公判で裁判員に選ばれた。「貴重な経験、せっかくだしやってみようと思った」。だが、大学のホームページに「裁判員になった場合」の規則は見当たらなかった。当時は後期の授業が始まったばかり。「幸い取っている授業は多くなく、自分で担当の教授に事情を説明して欠席を認めてもらいました」

 1カ月以上にわたった刑事裁判は新鮮で、参加したことで司法への信頼感も上がった。しかし、その後待っていたのは、欠席した授業の復習に追われる日々。「とにかく周りに追いつくのが大変だった」と振り返る。

 2023年から、重大事件を審理する裁判員裁判に新たに18、19歳が加わり、高校生や大学生が裁判官と一緒に殺人事件を裁くケースが生まれている。一方で、裁判員期間中の講義や試験はどうするのか、大学の対応にはいまだ法令の定めがない。共同通信は全国の国立大学を対象に、学生が裁判員に選ばれた際の規則の有無を尋ねるアンケートを実施。見えてきたのは学生の制度参加に対する大学側の後ろ向きな姿勢だった。

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