富山に、既存の公教育にとらわれない学校「オルタナティブスクール」(もう一つの学校)をつくろうとする動きがあります。2人の娘を持ち、英会話教室を主宰する永谷真弓さん(富山市)に、思い描く学校を聞きました。 

近年、注目を集めるオルタナティブスクールは、児童生徒が自分たちで学習内容やイベントの内容を考えて決めるなど、独自のカリキュラム、教育理念を掲げます。

一般的に、フリースクールも含まれます。学びの場をつくるという意味では、NPO法人を設立しフリースクールを運営する方法もありますが、永谷さんは「フリースクールに通うことに抵抗感を抱く人がいる。学校として卒業証書を出したい思いもある」と、学校法人を目指すことにしました。 

(公教育では、小中学生は出席日数にかかわらず卒業できます。フリースクールなどに通う場合は、在籍する地域の学校から卒業証書が出されます) 

アメリカの高校、生徒に教師選ぶ権利

永谷さんがオルタナティブスクールの創立を目指したきっかけの一つは、自身の子どもの頃の体験にあります。通っていた中学校は、進学校への受験対策に力を入れていました。

永谷さんは「決められたレールに乗るのが嫌」と、県外のアメリカンハイスクールに進学。その後、アメリカの高校に留学しました。

そこでは生徒自身に授業のカリキュラムや教師を選ぶ権利があり、日本とは違う教育が行われていました。「最初は戸惑ったけれど、だんだん学ぶことへの意欲が高まり、興味があることをとことん追求しようという力が湧いてきました」と振り返ります。 
 
大人になり、富山で子ども向け英会話教室を開くと、再び日本の教育システムに疑問を抱くようになりました。教室で英会話がうまくなっても、学校の英語のテストでは良い点数を取れないケースがあったためです。

「学校では、受験で点数を取るための勉強が行われているのかなと思いました」と言います。だからこそ「子どもが興味を持ち、楽しんで学ぶことができる場所があってもいい」と考え、自らが先頭に立ち、新しく学校をつくろうと決めました。 

教育関係者やママ友と活動 
学校法人の設立目指す

今春「【Toyama Happy School Project】“子どもが主役”の学校をつくる会」を立ち上げ、9月に「とやまハッピースクール設立準備財団」を設立しました。

永谷さんが理事長を務め、志を同じくする教育関係者やママ友、会社経営者、農業従事者ら8人の役員が中心となって活動しています。 

現在、教育方針やカリキュラムの検討を進めています。教育目標は「子どもたち、その家族やファシリテーター(学校の大人たち) みんながHappyを感じることのできる学校!」とし、一学年の定員は20人を考えています。

学びについては、プロジェクト学習、テーマ学習、基礎学習、アートプログラムの四つの柱を設け、子どもが学ぶテーマを選んだり、学習計画を立てたりします。 

テスト・宿題・数値評価-全てなし 

特徴的なのは、学校でテストをしたり、宿題を出したりしないこと。「子どもに勉強を無理強いするのではなく、自主的に学習するよう大人がサポートすることで、資質を伸ばすことができる」と考えるからです。

スクールでは教員のことを「先生」ではなく、進行役を意味する「ファシリテーター」と位置づけます。数値評価も行いません。 

永谷さんは候補地の選定など準備を進めています。「現在の学校教育になじめない方もいると思う。スクールが、多様な学びの場の一つとして、親御さんや子どもの選択肢となればいい」と意欲を語ります。 
 
>>>とやまハッピースクール設立準備財団

>>>全ての子どもに多様な学びの場を/早稲田大名誉教授 喜多明人氏インタビュー