競技普及・プロ発掘目指す
eスポーツの国内トップリーグに参戦しているゲーミングチーム「バーニングコア(BC)」が今夏をめどに、東京から富山県内に拠点を移転する。5月にBC社長に就いた堺谷陽平さん(33)=高岡市=が、プロ選手による高校生への指導など競技の普及を目指し、富山で活動することを決断。「eスポーツ先進県としてさらにレベルアップさせたい」と語る。
eスポーツは、パソコンや家庭用ゲーム機で行われる対戦型ゲーム競技。9月に中国・杭州で行われるアジア大会では正式競技となり、将来の五輪採用も検討されている。政府には強化支援の動きも出ている。優勝賞金1億円が懸かる大会もあり、トップレベルの試合ではコンマ数秒の操作が勝敗を分ける。
BCには、全世界のプレー人口が1億人超の人気ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」などの選手が所属。LoLは5人1組で相手の本拠地の破壊を目指す戦略的PCゲームで、BCは2018年から国内トップリーグに参戦。所属するRay(レイ)Farky(ファーキー)選手は、アジア大会の日本代表に選出されている。
東京から富山に移転する拠点は、BCの本社と、大会のプレー場所としても使用する練習施設。富山市や高岡市などが候補地で、夏に本社を移し、秋までに練習施設を整備する計画だ。施設は居住もでき、LoL部門の選手やコーチ、スタッフら約10人が移住する予定となっている。
堺谷社長は県eスポーツ連合会長も務め、自身が中心となり、県内でeスポーツのさまざまな事業を展開。ゲーム愛好家を対象としたイベントだけでなく、認知症予防につなげるための高齢者向けの体験会や、児童と高齢者の交流会を開いた実績がある。堺谷社長によると、こうした取り組みは業界内で注目を集め、「eスポーツ先進県」とも呼ばれているという。
移転に伴い、県内の競技の裾野拡大に力を入れる。具体的には高校のeスポーツ部などでプロ選手が指導することを検討。7月には大会を開き、優勝者には米ラスベガスで行われる世界大会の出場費用を全額援助する。
県内のゲーミングチーム「TSURUGI TOYAMA」とも連携し、プロを志す選手を発掘。BCや世界の舞台で活躍できるよう育成する。
堺谷社長は「BCが拠点を置くことで、県内の大会やイベントをより大きくできる。富山県をeスポーツの聖地にしたい」と意気込みを語った。
小矢部出身2選手活躍
県内に拠点を移すBCには、人気格闘ゲーム「ストリートファイター」の選手として、小矢部市出身で幼なじみの2人が所属している。立川透さん(25)と大谷元希さん(26)で、日本を代表するプロ選手として活躍。2人は富山のeスポーツ発展に期待を込める。
2人は保育所から中学まで同じで、中学時代からゲームに熱中。別々の高校に進んだが、好敵手としての関係は変わらず、大谷さんの自宅で「スーパーストリートファイターⅣ」でしのぎを削った。大学生になり、国内大会に出場して好成績を収めた。その後、立川さんは世界大会で優勝、大谷さんも国内大会で準優勝するなど実績を残している。
立川さんは、今年は国内の別のチームで活動。昨年に世界優勝したチームにレンタル移籍したためで「連覇に貢献したい」と話す。
大谷さんは2日に発売されたシリーズ最新作での競技に向けて準備している。「昔は家でゲームをやるしかなかった。BCが移転することで富山の競技人口が増え、切磋琢磨(せっさたくま)できる環境が整ったらうれしい」と語る。