富山県魚津市鹿熊に自宅兼作業場「藍染め屋aiya」を構え、藍染めの魅力を伝えている南部歩美さん(38)は1日、昨秋に初めて仕込んだ自家製染め液を使った体験会を開いた。地域一丸となって原料栽培から染料作り、染め付け作業に至る全工程に取り組むプロジェクトの一環で、参加者が味わい深い濃淡豊かな品を仕上げた。
2015年に本格的な藍染め活動を始めた南部さんは、18年に中山間地の鹿熊に作業場を構えた。藍染めを通じた地域活性化を目指し、「つなぐプロジェクト」と銘打って20年から耕作放棄地で原料となるタデアイの栽培をスタート。県内外に仲間の輪を広げ、苗植えや刈り取りに3年間で延べ200人が協力した。
2年目の21年秋には岐阜県の藍染め職人の指導を受け、「すくも」と呼ばれる染料の製造に初挑戦。2年間で収穫したタデアイを発酵させ、数カ月かけて黒々としたすくもを作った。1年間寝かせ、昨年11月にあくや酒、小麦殻などと混ぜた染め液を完成させた。「1人の力では途中で挫折していた。多くの協力があったおかげで目標が実現した」と振り返る。
体験会で南部さんは、黒い染め液が付いた布が空気に触れて藍色に変化することや、染める回数の違いで濃淡を表現できることを解説。参加者は今回の染め液に白い手ぬぐいをくぐらせ、思い思いの模様を浮かび上がらせた。杉本亜紗子さん(40)=魚津市住吉=は「発酵や酸化など藍染め工程の奥深さを体感できた」と話した。
プロジェクト4年目の今年はタデアイの生育が順調で、今秋に2度目のすくも作りを予定している。南部さんは「みんなで作った染め液が形になり、活動に関わってくれた人への感謝でいっぱい」と語った。