富山県魚津市の宮本みそ店、魚津酒造、長岡酒店の3社は、全国で“幻の米”とされる希少品種「亀の尾」の日本酒を造った。県内でも珍しい米は、宮本みそ店が減農薬で栽培した逸品。地元産の原料と水を使った酒造りをしたい魚津酒造と長岡酒店が企画を持ちかけ、商品化が実現した。3社は「素材も酒蔵も魚津にこだわった酒を味わってほしい」としている。

 亀の尾はコシヒカリなどのルーツとされる飯米。明治期に山形県で発祥したが、栽培が難しく、改良品種の登場に伴い1970年代に姿を消した。だが、久須美酒造(新潟)が80年ごろに生産を再開し、日本酒を醸造。復活劇は漫画「夏子の酒」のモデルとなり、亀の尾を扱う酒蔵が全国で増えた。富山県内では三笑楽酒造(南砺)が販売する。

 亀の尾は深いうまみが特徴。宮本みそ店は57年の創業以来、コシヒカリで製造してきたが、「原料を変えてみたかった」と言う宮本晃裕代表(42)が3年前に長野の農家から亀の尾の種もみを譲り受けた。自家栽培し、玄米こうじのみそ造りに生かしてきた。

 長岡酒店の長岡貴啓代表(48)は昨秋、魚津市で作られる亀の尾を知り、魚津酒造に醸造を提案。坂本克己杜氏(とうじ)(51)と共に、宮本みそ店に協力を求めた。3月から醸造が始まり、米が溶けにくい状態に苦労しながらも独特のうまみと酸味のある味に出来上がった。坂本さんは「魚津唯一の蔵として地域の人と酒造りができて良かった」と語り、宮本さんは「亀の尾の酒が造られたのは夢のよう。米づくりの新たな可能性を感じた」と話した。

 「酒屋のアイデアで実現した『オール魚津の酒』をPRする」と長岡さん。魚津酒造の北洋シリーズとして5月25日に発売する。720ミリリットル1980円、1800ミリリットル3960円。