50年にわたり、地域住民に親しまれている富山市荏原の銭湯「荏原鉱泉」が今春、約2カ月の休業を経て再開した。オーナーが体調不良で切り盛りできなくなったが、同市中島の銭湯「立山鉱泉」の店主、中平昇吾さん(35)が運営を引き継いだ。スタッフらと共に、住民の憩いの場である銭湯を守っていく。
荏原鉱泉は1973年に創業。大浴場からコイが泳ぐ庭園が見える。お湯を沸かすボイラー室の管理などをしていたオーナーが体調を崩し、1月下旬から休業した。
荏原鉱泉周辺に住む人にとって徒歩圏内にほかに銭湯はない。休業中、同鉱泉には「何とかならないか」などと再開を願う電話が相次いだという。気持ちに応えたいと、番台に立つオーナーの家族が県公衆浴場業生活衛生同業組合に相談。中平さんを紹介してもらった。さまざまな業務をこなせるフットワークの軽さが理由だった。
再開したのは3月下旬。常連客の中には涙ながらに喜ぶ人もいたという。近くの80代女性は「生活の一部になっていたので、閉まっている間は心配だった。また来られてとってもうれしい」と笑顔を見せた。
同鉱泉の番台には、中平さんが立ち上げた「ビームス商会」のスタッフやオーナーの家族が立ち、地域住民らを変わらず迎え入れている。
オーナーの三女、飛田悦子さん(41)は「みんなと力を合わせて頑張っていきたい」と話し、中平さんは「銭湯は地域ごとにお客さんの雰囲気が違うので、住む人に合った形になるようにこれからも考えていきたい」と話した。
荏原鉱泉の営業時間は午後3~9時半。日、月曜が定休。