富山県射水市立町(新湊)の浄土宗寺院、大楽寺(だいらくじ)が所蔵する江戸、明治時代の書籍498点の目録が完成し、調査した石川工業高専講師の山崎梓さんと県立大非常勤講師の奥野美友紀さんが29日、同寺を訪れて贈呈した。2人は「北陸では珍しい近世文学の本が残っている。貴重な資料が富山にあることを広く知ってもらいたい」と話す。同寺は近く、「江戸文学図書館」を開設して目録化した蔵書を公開する。
大楽寺は996年開山の長徳寺を前身とする歴史ある寺。大広間は明治初期に小学校として活用され、国登録有形文化財になっている。寺に伝わる経典や、田村晴彦住職と父が集めた本など約2千点を所蔵する。
この約2千点のうち、仏教関係の約1500点は15年ほど前に調査を終了。他にも御伽草子(おとぎぞうし)や戯作といった文学資料、北前船や和算、薬事に関するもの、全国の城の地図などさまざまな分野の本があったが、当時はまだ調査されず残っていた。
江戸時代の日本文学が専門の奥野さんが2015年に同寺を訪れ、「これだけの蔵書の存在が知られていないのは残念」と目録化を提案、所属する北陸古典研究会の11人で調査した。日本学術振興会の助成を受け、16年度から7年間かけて目録を作成。A4判、96ページで350部作り、全国の大学や県内の図書館に配布した。
寺に開設する図書館は予約制とし、大広間で古典に触れてもらう。田村住職は「タイムスリップして楽しんでもらう機会をいろいろな人に提供したい」と話している。