富山県の若鶴酒造(砺波市三郎丸)と老子製作所(高岡市戸出栄町)、富山県産業技術研究開発センターが共同開発した鋳造製ウイスキー蒸留器「ZEMON」が、岐阜県高山市の舩坂酒造店が運営する飛騨高山蒸溜所に導入され、25日に開所セレモニーがあった。昨年9月に英国で特許が認められた富山生まれのZEMONが若鶴酒造以外で導入されるのは初めて。飛越交流により実現した蒸留所で、4月に蒸留を始め、2026年秋のシングルモルト発売を予定している。

 高岡銅器の釣り鐘の製造技術から生まれたZEMONは、銅とスズの合金製で、まろやかで高品質なウイスキーを造ることができる。

 飛騨高山蒸溜所は、舩坂酒造店が、2007年3月で廃校になった旧高根小学校(高山市高根町下之向)の2階建て校舎を活用し、岐阜県初のウイスキー専門蒸留所として約3億5千万円かけて整備。クラウドファンディング(CF)で3762万円を資金調達した。

 旧体育館に蒸留所を設け、旧校舎は貯蔵庫として活用する。ウイスキー造りは日本酒造りで忙しい冬以外に行い、初年度は4万リットルの蒸留を予定する。

 「開校式」と銘打った開所セレモニーは旧体育館であり、約60人が出席した。舩坂酒造店の有巣弘城(ありすひろき)社長が「地域の宝の校舎に新たな息吹を与え、多くの人の笑顔や幸せにつながる蒸留所にしたい」とあいさつ。総合アドバイザーとして協力する若鶴酒造の稲垣貴彦CEO(最高経営責任者)が「日本のウイスキーの仲間が増えて盛り上がることを期待している。長い旅路を一緒に歩むパートナーとして支援したい」と述べ、田中明高山市長や北村斉(ひとし)高山商工会議所会頭も祝辞を述べ、老子製作所の老子祥平社長やウイスキー通信販売のモルトヤマ(富山市今泉西部町)の下野孔明(ただあき)店主も出席した。

 若鶴酒造の三郎丸蒸留所のモルトウイスキー原酒とブレンドした商品開発も目指す。今夏以降に見学を受け入れ観光拠点とする。