肩こりや肩の痛みの改善方法の一つとして、前々回(vol.11)では、首のストレッチと目の運動にスポットを当てて、エクササイズを行いました。今回は、肩甲骨へのアプローチで、肩の悩みを解決していきましょう。


 肩甲骨は、姿勢や心の疲れ、季節(寒い時期、暑い時期)によっても、ケア方法が変わってきます。肩甲骨の間には、温度を感じるセンサーのようなものがあり、寒い時には縮こまり(内転)、暑い時には逆に広がる(外転)特性を持っています。プロアスリートのケアを行う時は、寒い季節であれば背中の肩甲骨の間にホッカイロを貼ったり、夏の暑い時には氷を当てるなどの処置を行い、肩甲骨を元の位置に戻すということをしています。

肩を動かす時は、鎖骨イメージで!!

 まず肩甲骨の動きについてご説明します。
肩甲骨は、鎖骨、上腕骨とも接し、内転、外転、挙上、下制、前傾、後傾、上方回旋、下方回旋など、たくさん動く場所であるため、“可動性”が大切です。また、各位置で止まるという“支持性”も必要となる重要な骨格です。

では日々どのように動かしているでしょうか?

肩を回す、肩を上げるという動作は日常的にしていますが、その時、ほとんどの人が上腕骨だけで動かすイメージを持っているため、可動性が少なく、肩関節への負担が大きくなっています。

そこで、肩甲骨とつながっている鎖骨から肩を動かすイメージを持ってみてください。可動域はぐっと広がり、肩への負担は少なくなります。

肩の動きをチェック!

1 まず、何も意識せずに手をまっすぐ上に挙げてみましょう。その時に、上腕骨のみで挙げる人は体の後ろまで手が伸びません。


2 次に、逆の手を鎖骨に当て、鎖骨から手を挙げる意識でやってみましょう。先ほど動かなかった位置まで自由に伸びるイメージがつかめるはずです。

鎖骨と肩甲骨を意識して動かす練習

3 鏡に向かって横向きに立ち、ひじを曲げて、もう片方の手でそのひじを持ちます。肩できれいに円を描いてみます。


肩甲骨周辺の筋肉が硬い方は、円ではなく、三角形になりがちですが、これはNGです。鎖骨をうまく動かすイメージで、スムーズに円を描いてみましょう。前回し、後ろ回し、左右、各10回。

肩甲骨周辺の可動性(柔軟性)を上げるストレッチ

1 ひざをクロスさせて、横向きに寝ます。反対の手でひざを抑え、もう片方の手は頭に添えます。


2 顔を天井に向け、ひじをできる限り反対側に反らし、思い切り胸を開きます。この時、ひざは着いた状態をキープすることは忘れずに。これを10〜15回繰り返します。

肩周りの支持性・周囲の筋肉を鍛える

次に、筋肉を鍛えるための“ATY運動”と呼ばれるトレーニングです。
1 うつ伏せになり、手をAの形に広げ、肩甲骨から挙げて3秒キープ。Tの形、Yの形も同様に行います。
これを10〜15回繰り返します。Aの時は小指が上、TとYの時は親指が上を向くように意識しましょう。


鎖骨の動きが滞っていると、皮膚も硬くなり、痛みの原因に繋がります。ストレッチをした後に、鎖骨の皮膚をつまんでほぐしてあげると、とても効果的です。


今回のエクササイズは、適度な位置、適度な動きに戻してあげることが目的ですので、やりすぎないように、無理のない範囲で少し負荷がかかる程度に、継続していくことが大切です。

◆八田将志(はった・じょうじ)◆

 

理学療法士。「動きを診る専門家」として整形外科クリニックや富山サンダーバーズで働いた経験を活かし、現在は病院や高校サッカーのチームで、整形外科疾患に対するリハビリテーションや競技復帰へ向けたアスレチックリハビリテーション等を行う。