受賞者紹介

 夢中になれる物語で子どもたちに希望と感動を与えたい-。第14回北日本児童文学賞は、全国から438編の力作が寄せられた。入賞した3作品は、個性豊かなストーリーと構成で、読み手を物語の世界へといざなう。創作のきっかけや作品に込めた思いを紹介する。優秀賞2編は13、15日の本紙で紹介する。

最優秀賞  草間 小鳥子さん

子育てで視野広く

草間 小鳥子さん(写真)

「楽しい作品を書いていきたい」と話す草間さん=横浜市内

プロフィル

くさま・ことりこ 1987年神奈川県横浜市生まれ。日本女子大文学部英文学科卒業後、映像音楽会社に就職。退社後、執筆を始める。「現代詩手帖」などで入選多数。

映画やテレビ、本など媒体を問わずエンタメ系全般を好む。面白さや楽しさを第一に考えた創作スタイルで、「軽いノリでおやつでも食べながら読んでもらえたら」と笑う。

 母は児童文学作家の岡田貴久子さん。その影響で小学生時代から読書に親しみ、冒険ものや推理小説などジャンルを問わず幅広く読んだ。出身の日本女子大附属中学校は国語教育に力を入れており、授業では文学作品を題材に先生が書評するスタイル。読書や作文の課題も多かった。そうした生い立ちが、現在の礎になっているという。

 映像音楽会社に就職し、映像プロデューサーとしてバリバリ働いていたが、うつ病を発症し退職。家で時間を持て余し、詩の創作を始めた。「現代詩手帖」などに投稿し、受賞も数多い。そんな矢先、「短めの児童文学作品も書いてみようか」と思い立った。小学2年の時、那須正幹さん原作の「ズッコケ三人組」の人形劇を見て感銘を受けたことがあり、「選者の那須先生に自分の作品を読んでもらいたい」と応募を決めた。ズッコケシリーズは自宅に全巻そろえている。

 受賞作は、ごくありふれた生活を送る少年の頭に突然座布団が貼り付いて離れなくなるという奇想天外な設定。座布団には魔法の力があり、少年は不思議な体験を重ねていく。「思い切り非現実的なストーリーで、わくわく感を出せるのがフィクションの良さ」と力を込める。「ばふばふっ!」などユニークな響きの擬音語も多く、情景を目の前に浮かび上がらせる。

 1歳4カ月になる長男の子育てをしながら筆を執った。モチーフの座布団は、いつも息子が座布団の上で気持ち良さそうに寝ているのを見て思い付いた。「育児中、息子の目線に立つことで気付くことも多く、視野が広まった」と振り返る。

 今後もジャンルを問わず楽しい物語を手掛けていきたいという。「寝床に入った時などに読んでもらい、『幸せなひとときだった』と感じてもらえる作品が書けたらいいですね」

優秀賞  ちば るりこさん

会話からヒント得る

ちば るりこさん(写真)

ちば・るりこ 1958年岩手県生まれ。日本福祉大社会福祉学部卒。2002年に岩手芸術祭児童文学部門芸術祭賞を受けた。岩手児童文学の会会員。

 特別支援学校や小学校の教員として長年勤務してきた。子どもたちに面白い本を薦めたり読み聞かせをしたりしているうちに児童書への関心が高まり、20年ほど前から「自分でも何か物語を作りたい」と執筆を始めた。

 2年前に退職した。現在は学校の非常勤をしながら3カ月に1回は上京し、同人誌「ふろむ」の創作活動に参加している。地元の岩手児童文学の会の事務局も務めている。

 「キジ撃ち」は、コンプレックスや友人関係で悩みを持つ中学生の主人公(佑季)が一緒に登山をした人たちとの出会いから山の魅力に気付き、自分を見つめ直す物語。「人間なら誰でもつらいことを抱えているが、きっかけがあれば乗り越えることができる。勇気を持って自分で道を開いてほしい」とのメッセージを込めた。登山部の顧問をしていた夫や息子との会話から、創作のヒントを得た。

 趣味は人間観察。人と触れ合う中で「この言葉、頂き!」と思う瞬間があるという。「特に子どもたちとの会話はきらめく言葉の宝庫。日々の出会いに感謝しています」

優秀賞  南田 幹太さん

自然と向き合う兄妹愛

南田 幹太さん(写真)

なんだ・かんた 1963年東京生まれ。法政大経営学部卒、米セントマイケルズ・カレッジ大学院修了。銀行やマスコミなどを経て、フリーの翻訳家として活動する。

 翻訳の仕事で師匠から「君はオリジナルの文章を書くと、いい具合になるのでは」と助言されたのが創作を始めたきっかけ。翻訳の場合、訳者の個性が前面に出過ぎるとよくないが、小説などは思い切りオリジナリティーが出せる。高校の同級生からも「お前はもともと作家希望だったじゃないか」と背中を押され、書き始めた。

 北日本児童文学賞は3度目の挑戦。「今年は他の作品に埋もれないよう、なじみのない場所を描こう」と北海道の田舎にある牧場を舞台に設定した。幼い兄と妹が自然の脅威と向き合いながら愛を育む物語だ。猛吹雪の山道で手を取り合って歩く2人を克明に描写し、「この先どうなってしまうの?」と読み手をハラハラさせる。

 牧場で飼っていた牛の親子が野生のヒグマに殺される場面も登場する。「人間をはじめ、動物は他の動物の命を頂いて食料を得ていることも伝えたかった」と強調する。

 「ズッコケ三人組」を例に挙げ「子どもの等身大を描いたエンターテインメントが書けるようになりたい」と意欲を見せる。書き続ける過程で、自らの引き出しを増やしていきたいという。