選考を振り返って

新たな生き方描く

 国内外から1297編の応募があった第49回北日本文学賞は、地元選考委員の1~4次にわたる審査によって33編まで絞り込まれた。いずれも一定のレベルに達していたが、抜きん出た作品がなく、最終候補作6編を決める選考作業は約6時間半に及んだ。

 例年と同じく、介護や離婚、失業など自身の経験や身の回りの出来事をテーマにしたものが目立った。従来は苦悩を前面に打ち出す傾向が強かったのに対し、今回は応募作の多くが現実をありのままに受け入れ、肯定的に表現しようとしていた。不遇をただ嘆くのではなく、そこから一歩踏み込んで、新たな家族像や生き方を描こうとした意欲作もあった。

 その一方、自身の経歴や思い出を書き連ねただけの応募作が散見された。小説のスタイルは採っているものの、これでは誰の胸にも響かない。読者に訴えたい「核」や「芯」が何なのか、明確にする作業が欠かせない。

 各地の伝統や風土を見つめた作品が増えたことも、今回の特徴と言えるだろう。

 選奨作「色挿し」は京都の友禅染めを通して淡い恋模様をつづり、最終候補作「なまえ」は岐阜・長良川の鵜(う)飼い漁を題材に選んだ。候補から漏れたものの、渡辺真理子(石川)の「白花(びゃっか)立つ」は、出身地である南砺地方の方言が主人公の女性と家族、住民との心の通い合いを、より温かなものにする効果を上げていた。富山を舞台に、選者が本紙で約3年間連載した小説「田園発 港行き自転車」の影響があるのかもしれない。

 選評で選者が指摘しているように、地元選考委員会でもタイトルの善し悪しが話題になった。題名は読み手の心をつかみ、かつ全体を象徴するものでなければならない。いくら話の筋が良かったとしても、題名がまずければ読む気がうせてしまう。同音異義語などの誤字脱字の多さも気になった。推敲(すいこう)を忘れないでほしい。

 県内からの応募は前回より24編少ない63編だった。4次選考を通過したのは、金野和典「鍬崎山チラシ」(富山市)、島なおみ「鶏夫の来た部屋」(同)、中村隆夫「気骨」(同)の3編にとどまった。=敬称略

(文化部・黒田修一朗)